『殺人は容易だ』の容疑者は、田舎の小さい村の誰かだ。そうは言ってもこれだけでは、まだかなりの人数になる。
ところが、犯人は犯罪の告発者と同じ階級の人間らしいということで数人に絞られる。登場人物一覧表に載せられる人数だ。
クリスティの小説には「階級」という言葉が良く出てくる。貴族かどうかの違いではないようなので身分と言うのとも違うようだ。
日本でいうところの「いいところのお嬢さん、お坊ちゃん」という感じで使うようだ。「育ちがいい」のにも近いのかもしれない。
「イギリスはいまだに階級社会だ」と聞くこともあるが、十九世紀のフランスやロシアの小説を読んでもイギリスの階級と同じものはないように感じる。
一般の小説だとイギリスの小説よりフランスやロシアの小説の方が気にいるのは、どうも自分の階級が、イギリスで主人公と対等の人間扱いされる階級より下のような気がするからかもしれない。
身分違いの恋というのはあっても、階級違いの恋というのはないように思われる。
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