2014年3月31日月曜日

クリスティ文庫(40)

 『アガサ・クリスティ―自伝』、最初の夫と離婚するまでがほぼ『未完の肖像』と同じ。エピソードが既に読んだものばかりなので、目新しさがないのが残念。
 有名な失踪事件に触れていないが、自伝はアガサ本人の記憶に基づいて書かれているので、本人の記憶にないことを書けないのは当然だ。
 自分のことを最もよく理解してくれていた母親が亡くなり、一人で遺品の整理をしている(同居していた祖母の遺品もある)途中、小切手に自分の名前を書こうとして自分の名前が思いだせない記述がある。そのあたりの記述を読むとうつ病ではないかと思う。ネットでみるとうつ病で記憶障害が起こることもあるらしい。
 夫が愛人をつくったことで記憶喪失になるのかと思っていたが、母親の死が大きかったのではないかと思い、一時的記憶喪失は本当だったのだろうと思う。
 本当のことを言っても信じてもらえず、本当らしい嘘を言った方が信じてもらえそうで、信じてもらえない苦しさから逃れるために、まわりの人間が期待している嘘を言ってしまう。これは、『無実はさいなむ』、『バグダッドの秘密』、『ゼロ時間へ』に出てくる。

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