2014年2月3日月曜日

クリスティ文庫(10)

 短編集『死の猟犬』、怪奇的小説が集められている。「検察側の証人」は例外だ。本当に超常現象が起こったというものと、トリックでそう見せかけただけのものがある。
 この短編集は初めて読むが、以前に読んだ話もある。多分、父親が買った雑誌「宝石」の中に載っていたのを子供のころに読んだのだと思う。
 「ラジオ」は、もう一度読みたいと思いながら、作者も題名もどの本で読んだかも覚えておらず、読めずにいたものだったので、今回、クリスティ文庫を読破することにしてよかったと思う。
 どこが、心に残ったかと言えば、度々ラジオから亡くなった夫の声が聞こえ、予告通りその夫が迎えに来るというその夜に、もう病気による死を覚悟しており、幽霊とはいえ自分の夫だから、恐れていないはずだったのに、いざとなったら恐怖を感じ、その恐怖の理由が、夫はもう随分前に亡くなっており、自分にとっては見知らぬ他人になってしまったことに気付いたから、というところだ。
 そして、この幽霊の声は何かのトリックで、結局皮肉な結果に終わったことは覚えていた。
 夫でも何十年も会わないと見知らぬ他人になるというところが、どういうふうに表現されていたかということと、どういうトリックでどこが失敗したのかを確認したかった。
 他に記憶していた短編は、「青い壺の謎」と「最後の降霊会」と「S・O・S」だ。(検索したところ、「青い壺の謎」と「最後の降霊会」は「宝石」で間違いないようだ。)
 怪奇的小説にも関わらずユーモア(あるいは皮肉)が感じられるところが、クリスティらしいと思う。
 100冊もあるので、人それぞれのベストテンがあると思うが、推理小説やミステリーはトリックやオチに着目してのそれが多いと思う。あるいは、登場人物の魅力に注目する人もいるだろう。自分なら「ユーモア」を基準にして選ぶんじゃないかと思う。

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