戯曲『アクナーテン』を読み、戯曲『評決』に似ていると思う(文庫ではブラック・コーヒーの題名の本に収録)。どちらも良いことを考え、実行するが、逆にそれが周りの人間に不幸をもたらす。
『評決』で、登場人物が最後の方で、「極端な理想主義者は、周りの人間を不幸にする点では、極端なエゴイストと変わらない」という意味の事を言う。
今放送中のドラマで、あくまで隠蔽工作に反対する主人公が、友人から家族のことを考えて、筋を曲げて保身に走るように忠告される。
永遠のテーマのように思う。自分は『評決』を気にいったが、興行成績はよくなかったようだ。クリスティ作の題名「評決」から観客が期待するものとは、違った内容だったせいだろう。クリスティは別の題名にしたかったようだが、通らなかったらしい。
読者の求めるものを書かせられる例は、いくつもあるように思う。シャーロック・ホームズは崖から落ちて死んだはずなのに、死んでいなかった。
オズシリーズも一度は終了宣言を出したが、書き続けられた。
スティーブン・キングの『ミザリー』で、作中の小説家は、熱狂的な読者に監禁されて一度死なせた主人公を生き返らせて話を続けるよう強要される。小説の中の現実と小説の中の小説が同時進行する。キングが書いたもので自分の好きな小説三本(か五本)の指の中に入る。
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