2014年2月20日木曜日

クリスティ文庫(20)

 『茶色の服の男』(1924)、アンという女性の冒険物語、アンが自分の体験談として語っているが、アンが自身で経験していないことは、別の人間の手記が語っている。
 作中、わたし(私)を指すのは、それぞれ別の人物ということになる。早川書房では別人の手記の部分は、字体を変えているので、文中の自分が誰なのかわかりやすいが、それでもぼんやりしていると間違えそうになる。
 この書き方でコリンズを思いだした。コリンズの『白衣の女』(1860)も『月長石』(1868)も、複数の人間の手記からなっており、しかも作中で筆者が交代するので、今自分は誰なのか読んでいて注意する必要がある。
 このコリンズの方式は、もともとあった形なのか、時代の流行なのか、コリンズが編み出したのかは、よくわからない。
 クリスティは、コリンズを読んでいると思うが、その影響を受けたのかも不明だ。
 全作読んでから自伝を読もうと思っているので、今後解決するかもしれない。

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