バラード作、SF作家として有名だと思っていたが、『太陽の帝国』はSFではない。スピルバーグ監督の映画があるのを知り、映画のCDと原作を両方借りた。
映画と小説、どちらを先に読むか迷う。小説を読んでいる途中で映画を見る。小説は11歳の少年の視点から書かれているので、主人公の少年にわからないことは読者にもわからない。
主人公は上海に住むイギリス人の少年だ。父親は裕福で中国人の使用人を使い、プールのある家に住んでいる。
主人公は、上海市内のホテルに泊まっていて、早朝、日本軍の軍艦がイギリス軍の軍艦に攻撃を仕掛けるのを見る。自宅があるのにホテルに泊まっている理由がわからない。映画を見て、事情がわかる。
太平洋戦争でのハワイの真珠湾攻撃は知っていたが、同時期に他の場所で日本軍による攻撃があっても不思議ではないのに、そのことについて何も知らなかったことに気付いた。
日本の軍艦は最初にアメリカの軍艦に呼びかける。
47頁「日本軍の将校もその水しぶきには構わず、メガホンを通してウェイク号に何か呼びかけた。
ジムは窓ガラスに手のひらを叩きつけては、ひとりで大笑いをした。上海の人間なら誰でも知っていることだが、アメリカ軍の将校は誰ひとりウェイク号には乗っていないのだ。全員パーク・ホテルの各自の部屋でぐっすり眠りこけているだろう。案の定、船首楼から出て来たのは下着姿の中国人の乗組員だった。」
日本軍の戦艦は、「イギリスで建造され、日露戦争のさなか一九〇五年に日本に売り渡される前はイギリス海軍で使われていた」46頁。
イギリス軍の将校はホテルではなく船に寝泊まりしている。やっぱりこのころはもうイギリスよりアメリカの方が金持ちなんだなぁと思う。そして日本はイギリスのお古を使い、中国人は自国で他国の使用人になっている。最初の数頁で各国の力関係がよくわかる。
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