2014年5月19日月曜日

バラントレイの若殿(3)

 若殿(兄)は戦死したと思われたので、弟が領地と称号の継承者になった。
 領地は抵当に入り、領地経営はうまくいっていない。弟は兄の婚約者と結婚し、妻の財産で領地を維持する。
 弟が兄の婚約者と結婚した後で、フランスに逃れていた兄から使者を介してお金の要求がある。
 兄は生きていたものの、戦争は現王の勝利に終わったので、反逆者となった兄がイギリスに戻れなくなった点は変わらないので、兄の地位は復活しない。
 兄は遠慮せずに弟にお金を要求するが、もともと自分がすべてを相続するはずだったという思いがあるためらしい。
 とはいえ、実は弟の結婚相手のお金であり、弟が領地経営に従事した結果のお金なので、「本来自分のもの」とは言えないだろう。
 ここで、「かまどの灰まで」という言葉を思い出す。日本も戦前の長子単独相続の時代なら、兄は弟に対して全部自分のものだという気持ちだったのかもしれない。
 兄は、その後も、何度も弟にお金の要求をしてくる。現在でも、兄が家を出て、家業を継いだ弟に、失敗するたびにお金を要求して、弟が縁を切ることもできずに苦しむというテーマの小説はあり得る。
 ただ、背景に同じ兄弟でも兄だけが領地も称号(名誉)も受け継ぐという制度がなければ、弟がまるで悪魔にとりつかれるように兄に苦しめられるという状況にはならないように思える。

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