若殿は戦争に負けて、海賊船にのってアメリカ大陸に逃れ、そこに海賊の財宝を隠してから、フランスに渡る。
フランスからお金を請求してきていたが、突然本人が家に帰る。読者にはその時点で兄の本性がわかっているので、兄がどういう行動に出て弟からできる限りのものを奪い返していくのか、それまでの話と比べ、行動面では地味で退屈になるにも関わらず、俄然スリリングになる。
大人には派手な肉弾戦より地味な神経戦の方がおもしろい。
海賊の宝が出てきて、『宝島』を思い出す。思い出すといっても、子供の頃一度読んだだけで、覚えているのは冒頭の宿屋の部分だけだ。
子供の頃、世間の評判ほどには、おもしろくないと思った。最初のところは、いったいいつになったら宝探しが始まるのだろうかと退屈した。とはいっても、宿に泊まる船員が生み出すおどろおどろした感じは印象に残り、結局その部分をずっと覚えていたのだから、そこのところは面白かったということになるのだろう。
今、改めて読んでみた。最初のところは、思ったほど長い気はしない。宿屋が襲われるところは、読んだ覚えがしてくるし、今読むとおもしろい。そのあとの部分は、まあまあおもしろいと思うが、完全に忘れていた。
一本足の船員が、ワルだが、善人に見えて最初はみんなだまされる。人間的魅力はあって最後まで憎めない感じだ。
女性は悪い男に惹かれるというが、若殿はまさにそんな感じだ。誠実さはないが、場を楽しませ、その人がいないとつまらないという人間がいるが、若殿はそういうタイプだ。弟にとっては疫病神だったが、どうも憎み切れない。
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