2014年7月14日月曜日

田山花袋

 田山花袋の書いた「東京とその近郊」を読んだ。東京の近郊を東西南北に分けてその特徴を書いている。
 西は武蔵野だ。武蔵野は荒川と多摩川に挟まれた地域だ。今でも川沿いに整備された緑道を歩くとその雰囲気を味わえるように感じる。
 東は川が特徴だ。川が多いのは今も変わっていないが、白帆はもう見られない。田山花袋が知っているのは、汽車と蒸気船と高瀬舟が同時に存在する時代だ。
 田山花袋は、こう書いている。

 白帆は東郊の特色だ。荒川にも中川にも墨田川にもある。しかし小利根ほど白帆の多いところはなかった。
 『どうだ!あの帆!』
 『川がすべて帆だ』
 『皆な上流に登って行くんだね』
 『とにかく奇観だ』
 汽車の窓からこんなことを言ったことがあったのを私は覚えている。
―略―
 この川を往来する汽船通運丸のことも此処に書きたいと思う。

 田山花袋の書いている小利根は江戸川のことだ。花袋の『布団』は読んだことはないが、この「東京とその近郊」はおもしろかった。

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