2014年7月18日金曜日

佐々木マキと村上春樹(3)

 『図書館奇譚』を読んでいたら、「とても深くてうす暗い地下室で、ドアを開けたらそのままブラジルにでも出てしまいそうな気がする。」という文章に出会った。(文庫版201頁)
 「ブラジルの人、聞こえますか?」は、笑えるが、春樹のこの文章に笑いは感じない。なんだか残念な人のような気がする。多分マジで書いたのだと思う。こういう文章表現が出てくるところが、村上春樹の評価を難しくさせるのだと思う。
 『ふしぎな図書館』の羊男の絵と『羊男のクリスマス』の羊男の絵は、同じ絵だ。文章も『ふしぎな図書館』は『図書館奇譚』を子供向けに手直ししたという感じだ。
 『ふしぎな図書館』の方は、「ぼくはあきらめて階段をおりた。長い階段だった。そのままブラジルまでとどきそうな階段だった。」(22頁)となっている。
 主人公は図書館の地下で老人に会い、老人に連れられて更に下に降りて羊男に会う。
 『図書館奇譚』では、最初に地下に降りて、ドアを開けるところでブラジルの表現が使われ(川端康成の『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」からの連想だろうか?)、『ふしぎな図書館』では、老人に連れられ更に下に降りる階段でブラジルの表現が使われている。『図書館奇譚』で、この階段のところは「僕はあきらめて階段を下りつづけた。おそろしく長い階段だった。まるでインカの井戸みたいだ。」と表現されている。
 なぜ、深い井戸ではなく、「インカの井戸」なのだろうか?オシャレなカタカナで普通の人は「それ知らないだろう?」という言葉で修飾されているのが村上春樹の文体だ。そして、どこか有名な文学を真似たように感じられるところがある。
 

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