2014年7月18日金曜日

佐々木マキと村上春樹(2)

 『カンガルー日和』には挿絵があり、一連の村上春樹の長編の表紙と同じ雰囲気の絵になっている。
 絵本作家ではなく、イラストレーターが書いたような絵だ。絵を見ただけでは、『やっぱりおおかみ』を書いたのと同じ人間とは想像もつかない。
 最初の短編『カンガルー日和』と最後の『図書館奇譚』を読んだだけだが、挿絵を見て、それから感じる自分のイメージを楽しんだ方がいいように思う。
 作者もあとがきで「お気に入られなかったところは佐々木マキさんの素敵な絵をじっと眺めて、それで許してください。」と書いている。
 AとBは気が合って、BとCは気が合っても、AとCが気が合うとは限らない、そんな感じだ。
 『やっぱりおおかみ』は大人になってから本屋でみかけて買った本だが、気にいったのは、おおかみが「け」というところ。
 村上春樹の小説で、主人公が「け」というようなものがあるのか期待したが、ちょっと違うようだ。村上春樹の主人公が孤独でちょっとクールで、日本の小説にありがちな貧乏くさく妙にじめじめとしたところがないのは、いいのだが、「け」から感じる力強さがないように思う。そして、どこか精神を病んでいるような、病気までいかない、その一歩手前のような人間が決まって出てくるが、それも、また自己主張が弱く他人に遠慮しすぎで気がめいるだけだ。

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