2015年2月20日金曜日

安井算哲と関孝和

 鳴海風『算聖伝―関孝和の生涯』、関孝和の伝記かと思ったが、かなりの部分が、作者の創作のようだ。
 『天地明察』は、新しい暦を作った安井算哲を主人公とした小説だが、『算聖伝―関孝和の生涯』と付き合わせて見ると、この小説の中の主人公と関孝和についての記述は、これまたほとんど作者の創作のようだ。
 『算聖伝―関孝和の生涯』で二人が直接会うのは一度だけで、この時孝和はまだ関家に養子に入る前だ。孝和の方は子供のころから算哲のうわさを聞いており、ずっと前から会って暦学について教えを請いたいと思っており、せっかく会えたのに、算哲の方は、浅学の者など相手にしない態度だ。実際に会っていたとしても、算哲の方では記憶にも残らなかっただろう。後日、算哲の方から新暦づくりのために関孝和に数学の面で協力を求めているが、断られている。
 『天地明察』の方では、算哲が「関」という人間のことを知り、しきりに会いたがったが、実際に直接会うのは、新暦づくりに失敗した後で、このとき数学の資料を受け取り暦作りに役立てている。
 どちらの出会いも関孝和の協力も正式のものではないので、両者に面識があったことと、関孝和の協力があったことの証拠はないが、なかったことを証明することもできないだろう。
 公文書に残らないことは、当人が書いた手紙や日記などでも残されていないと後世の人には、わかりようもない。
 それでいくと、今生きている人間の一生を後世の人が知ろうとした場合、どうなるのだろうと思う。メールもブログも紙として残らないと何か頼りない気がしてくる。
 
 

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